俳優、西田敏行さんが、亡くなった。彼は唯一無二の個性があり、誰もが名優と多くの出演作をたたえてきた。
彼の晩年の作品に「フィクサー」がある。WOWOWの大型ドラマで全シーズン3の大作だ。
この中で、西田さんは、昭和から政財界を操る、闇のフィクサー、本郷吾一を演じている。
ドラマの中での鬼気迫る演技は、晩年の彼そのものを見るような気がした。
フィクサーは、陰で政治や財界を操る手練れ。大きなビジネスにはかならず彼の影が見え隠れする。
このドラマの中には、小泉幸太郎氏が、政治の闇を暴こうと奔走する刑事役で登場する。
これもまた、当たり役で、彼から出るセリフは、リアルに、自分の一族に向けられているようなそんな風に思わせてしまうほど、よくできている。
唐沢寿明氏が幼少の頃、西田さんの役の本郷が、「日本を乗りこなせ」とキーワードになるメッセージを設楽に贈る。それを胸に秘め、唐沢寿明氏演じる、設楽挙一は、どんどんと自分のエリアを拡大していくのだ。
シーズン2のラスト、フィクサーの世代交代が行われる。
西田敏行さん演じる、本郷吾一が、設楽の前で、拳銃を喉に当て自害するのだ。
拳銃の振動で、レクリエムのレコード針が一気に、曲のラストへ飛び、
ラストはレクリエムさえ、流れなかった。
終わったのだ。
返り血を浴びる、唐沢寿明氏・・・
えっ、西田敏行さんこの役をやってしまうんだ。
あんなにもユーモアにあふれて、明るいキャラクターを演じていた彼の
選んだ晩年の役は、なぜか、あまりにも、腑に落ちる役だった。
昭和からずっと名優とうたわれ慕われてきた、彼はある意味、俳優界のフィクサーだ。
もう、レクリエムも流れない。
そのドラマを見たとき、私はなぜだか、西田さんの死への覚悟を見た気がした。
ご冥福をお祈りします。
フィクサー
https://www.wowow.co.jp/drama/original/fixer1/